forget-me-not
『――リ…「フーウー!!!!」
ガラリと病室を開け、彼女の名前を呼ぼうと口を開いた途端…
甲高い声にかき消される。紛れもなくそれは…
『…リカ、』
リカ本人の元気な声。
「フーウー、心配かけてごめんねぇ。なんか私倒れちゃったみたいでー」
フフ、と陽気に笑いながらベッド脇のフルーツバスケットから葡萄を頬張る。
「…でも、なぁんだか知らないけど、今朝はパッチリ目が覚めちゃって。お医者さんももうなんともありませんってぇ…!」
3日間寝たきりだったのを取り返すかのように良く喋るリカは、確かに以前と全く変わらない。
「フウも食べるぅ?」
両手を葡萄の汁まみれにしながら訊いてくる。
(…なんでこの人、モテるんだろう)
なんか、色んな意味で、泣きたくなった。
『…本当に、何とも、ないの?』
「あったりまえでしょ~!私よ、私。藤堂リカよ!お医者さんがビックリしてたわよぉ」
ふふん、と得意気にカッコイイ人だったとか、もう余裕で下らない話を延々ペラペラ。