forget-me-not







『心の中の。ねー…』

「まじめに、訊いてるんですよ?」


しみじみと。半笑いで呟けばム、と顔をしかめられた。




『いや?真っ直ぐ、だなって』

「真っ直ぐ?」

『そ。新戸くんはさぁ、明るくて、キラキラしてて、真っ直ぐで。誰にでも優しくて。

太陽の下を笑顔で歩くのが似合う、ていうか』

「なんですか、それ」


片眉をさげた新戸くんも、半笑いになって訊き返す。




『だってさ、悪どいこととか、絶対考えないでしょ?』

「悪、どい…?」

『だから要するに、洗い立ての真っ白いシーツみたいってこと。表も、裏も、まっさらなの』


へへん、と。彼の頬をつついてニヤリ、笑った。




「洗い立ての…」

『真っ白い、シーツ?』

「先輩にはそう見えるんですねー」


口端に苦笑いを浮かべて、新戸くんは前を向いた。

冷めたカレーを、口に運ぶでもなくつつく。




「でも今、はぐらかしましたよね?」

『え、』

「だから、心の中の…」

『心の中のー、』

「いや、ほら、」


ほら、はぐらかしてる。

そんなツッコミが新戸くんの苦笑いに表れていた。

それでも、にやにやするのを止めない私。


―――怖かったから


真っ直ぐな新戸くんに向き合うことが。










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