forget-me-not
「ま、先輩のそういう所も、好きなんですけどね」
彼は言ったあとで、あからさまに「あ…」と声にならないそれに口を開ける。
しまった、とその口を手で覆った。
(…また、サラリと)
可愛い顔してシャイな癖に、サラリと大胆なことを言う。
この子がそれを計算のうちにやっているんだとしたら凄いと思う。
「いや、好きって言うのは、その―――」
目線をちらつかせ、声があがる。
(…ああ、なんか)
恥ずかしい、単純に。
「だからその、」
取り乱していたかと思えば急に落ち着いた声色に変わる。
コホン、と小さな咳をひとつしてから私の方へ向き直った新戸くん。
(…わ、真剣な目、だ)
「―――好きってこと、です」
(…認め、ちゃうんだ)
クスリ、思わず笑みが漏れた。
もはや真っ直ぐな告白への照れ隠しかもしれないけれど。
まともに相手にされていないと思ったのか、ム、と顔をしかめる新戸くん。
「――おい、葉、お前…何公開告白してんだよ」
ガタリ、と。
私の視界に突如映り込んだグレーのスーツ。
視線をあげれば向かい側の席に片手をついて、こちらを見下ろす人が居た。