forget-me-not
「泉月くん…!」
慌てた新戸くんが、前のめりになって泉月さんを制す。
(…あ、名前で呼んでる)
泉月さんは対照的に落ち着いていて、面白そうに私たちを眺めていた。
「ま、いいや。葉、この前言ってた話って何?」
「…こ、今度また言うよ」
からかわれてムッとしたのか、斜め下に視線を這わせて、小さく呟く。
「そ、?了解。
邪魔して悪かったな」
間髪を入れずにそう肯いて、すぐに立ち上がる。
随分サバサバしていてせっかちな人だな、と。この後この人にかき乱された空気をどうしたものかと…視線をキョロキョロとさせていた私。
と、
泉月さんが去り際にニヤリ、私を見下ろして笑った。
「…またね、」
ポン、と。大きな手が頭に触れたのは一瞬。
事態に気づいたときにはもう、カフェテリアの出入り口から彼のグレーの背中が消えるところだった。
(…触られ、た)
なんだか、なんだか、
子供だからって軽く扱われたようで、酷く、いやだった。