あの2日前
だから仁くんが怒りそうな事は避けてきたし、仁くんが嫌いなものは僕も食べなかったし、そうする事で仁くんみたいになれるって思っていた。
仁くんはいつも言ってた。

「俺の言うとおりにしていれば必ず凄い人になれるから。」

って。
具体的に仁くんが言う凄い人ってどんな人なのかは分からない。
でも仁くんが言うんだから、絶対凄いんだよね。
僕も仁くんが言っていた凄い人になりたいんだ。

「ねぇ、仁くん。」

「ん?」

「凄い人ってどんな人なの?」

「春にはまだ分からないよ。もう少ししたら全部教えてあげるから。」

「・・・うん、分かった。」

いつもこんな感じで具体的な話しは教えてもらえなかった。
一体、凄い人ってどんな人なんだろう。


もう少しで3年生に上がる時に仁くんが僕を仁くんの家に招待してくれた。
凄く嬉しかった。
今まで友達がいなかった僕は、友達の家に行った経験なんてなかった。
緊張したけど、楽しみの方が大きかった。
まずお母さんに遊びに行く事を話さなければいけないので学校が終わってからすぐに自分の家に帰った。
仁くんの家に遊びに行ってくるとお母さんに話したら、お母さんも喜んでくれた。

「春、やっとお友達ができて良かったわねぇ!じゃあコレ仁くんと一緒に食べたら?」

そう言って僕のお母さんは、たくさんの花びらの絵が書いてある大きな缶を僕の両手に抱えさせた。
中身はクッキーやチョコが入っている。
お母さんが僕んちにあったお菓子を缶に詰めてくれたようだった。
ちょっと重いけど仁くんが喜んでくれるかも知れないと思って頑張って仁くんの家の近くの待ち合わせ場所に向かった。

「仁くん、クッキーとか甘いもの好きだったっけなぁ・・・?」

間もなくして僕は待ち合わせの公園前の消火栓のところについた。
お母さんから預かった大きな缶をいったん地面に置いて両手をダラーンと下げて軽く腕をマッサージした。

「お母さん、もう少し小さい入れ物にしてくれたら良かったのになぁ。」

僕が1人言を話していると仁くんが来た。
< 6 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop