Strawberry & Happy Birthday
『はは…。おかしいじゃろ?
事故だけではない。
父親なのに実の娘のことをわしは何にも知らんのじゃ。
娘は…椿(ツバキ)は13歳の時に家を飛び出して行ったからの。それから18で命を落とすまで、椿が何をしていたのか、どこにいたのか、全く知らん。椿が愛した男も、すみれを宿した経緯も』
何も知らない。
その言葉を尊さんは何度も口にした。
『ずっとわしは命清流剣術を未来に残すことに必死じゃった。他のものには目もくれなかった。ただただ未来の為にと…そればかり。
その過ちに気づいたのが、椿が亡くなる直後だっんじゃ。
自らの命を捨ててまで椿はすみれをこの世に産み落とした。
その瞬間、わしは後悔した。今まで何をしていたんじゃろうってな。わしは椿に何もしてやれなかった。何もしなかった。
じゃからせめてもの罪滅ぼしに、すみれを育てる決意をしたんじゃ』
過ちをもう二度と繰り返さない為に―。