心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー
「なー俺の名前、どこ?」
「んー…私の名前もない」
これから3年間お世話になる中学校に足を踏み入れ、玄関前のクラス表にいる。
さっきから必死に探してるのに私達の名前が見つからない。
「もしかして俺ら…入学できなかった?」
「んなわけないでしょ!」
でも実際見つかんないし…。
え、まさかマジで入学できないの!?
「――――…あ」
「え?」
「あった」
「ホント!?」
ほら、と言って雅が指差す先にはちゃんと私達の名前が…。
「……あった…」
「なに名前があっただけで喜んでんだ」
「だってマジで入学できないのかもって思った…」
「んなわけねーだろ」
そう言ってポンポンとなだめるように私の頭を軽く叩く。
…ほら。
そんな事言ってたってちゃんと優しいんだから。
「良かった」
「なにがだよ」
「雅とおんなじクラスで」
「ふんっ。当たり前だろ」
いや、なにが?
そんな自信満々に言われても…。
「んじゃ、そろそろいこーぜ」
「うん」
「……どこ行くんだ?」
「武道館だよ!!」
「分かってるって」
いやいやいや…。
雅は歩きながらキョロキョロして武道館を探してる。
ほんっと、私こんなやつのどこに惚れたんだろ。
確かに学ランを着てる雅は他の男子が霞んで見えるほどめちゃくちゃカッコイいけどさ。
私は手元に視線を下ろす。
そこには、私の手首を掴む雅の綺麗な手があった。
……きっと私は、雅のこんなとこが好きなんだよね。
誰よりも私の気持ちを分かってくれて、私を大事にしてくれてるとこが。