心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー
「――ッ!……いーから早く起きろっ」
「はいはい」
無理矢理雅の手から離れて、身だしなみを整える。
…せっかく家で整えてきたのに。
髪とかボサボサじゃん。
「…………あ」
「ん?どうしたの?」
後ろを向いて真新しい制服に着替え始めていた雅が、何かを気付いたように振り向く。
「永遠――…制服、似合ってる」
何でもない風に一言そう言って、また自分の着替えに戻る雅。
……心臓、いくつあっても足りないって。
それが私には好都合で。
…ヤバい。うれしすぎる。
だってきっと、また顔が赤くなってたと思うから。
「…さ、先に下行ってるね」
「んー」
――ガチャ…バタン――
…ヤバいよ。本当に。
今日の雅サービス精神ありすぎじゃない?
なんで?なんか良いことあったっけ?
あ―――…違うか。
そうじゃないんだった。
雅があんな事をするときは、決まって寂しいときなんだ。
季節も……良くないよな。
大丈夫かな、雅。
…雅は、甘えることが苦手だから、屈折した形でしか、人に助けを求められない。
さっきの言葉もきっと、離れていかないようにで。
私の考え方がひねくれているようだけど、でもきっと、間違ってないと思う。
…大丈夫、雅。私は離れないよ。
ずっと、そばにいてあげるから。
いつかの言葉を思い出す。
そう、…そばにいるから。