心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー
その時、近くにいた友達が深紅に話し掛けた。
私に背中を見せ、向こうを向いた深紅にバレないように、小さく深呼吸をする。
雅の名前が出てきたとき、思わずドキッとしてしまった。
だって、雅は私の大切な男友達。
家も近くて、幼稚園も一緒の幼なじみ。
男子の中じゃ断然雅が一番仲良くて…。
大切な友達。
―――…友達?
私はその時、ハッと気づいてしまった。
いや、嘘だ。
違う。
そんな事はない。
慌てて湧き上がる想いを消す。
だってそんなはずないよ…。
頭では必死にそれを否定するのに、それを否定すればするほど、それに反するように心臓の脈打つ音は大きくなる。
雅は友達だよ。
うん、そう。大切な友達。
……なのにまさかそんな
好きだなんて。
そうと分かると、一気に想いが湧き出てくる。
これが――――…
恋?
思わず胸を押さえる。
恋って…こんな苦しいもんなの?
なぜか涙が出そうになって唇を噛む。
八重園 雅(ヤエゾノ ミヤビ)。
私の初恋で
5年間、大好きだった人。
そして
叶わない恋もあると、
痛いくらい
私の胸に教えてくれた人だった。