心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー
前に1度だけ、小学校低学年の頃、私だけが学校を休んだことがあった。
私は熱が出ることなんかめったに無くて、だからめちゃくちゃキツくて。
お母さんも私の看病やらなんやらで忙しくて。
雅にそばにいてほしかったけどうつるかもしれないからと朝から会えるわけもなくて。
そんなこんなで雅は琉憂兄ちゃんと渋々学校に行き、私はベッドで寝ていた。
―――そしてお昼頃になって。
私の熱が全く下がらなくてお母さんが憔悴しきっていたところへ、一本の電話がかかってきた。
…………学校から。
かけてきたのは担任の先生で、ここにかけるよう指示したのはお兄ちゃん。
用件は、たった一言だった。
『雅くんをどうにかしてください』と。
うまく意味が飲み込めなかったお母さんは話しを詳しく言うように促す。
そこから電話を代わったのがお兄ちゃん。
電話から聞こえた声は珍しく困りきっていたらしい。
『どうしたの?』
そう聞くとお兄ちゃんは沈黙を置いてから話し始めた。
…段々と険しくなっていくお母さんの声をよく覚えてる。
この時も雅の両親はいなかったから、事実上私のお母さんは雅を息子のように接していた。