【短編集】闇に潜む影
どれくらい時間が経っただろう。
1時間、2時間くらい経ったかもしれない。
5分、10分、15分くらいかもしれない。
泣き疲れた私がフェンスにぐったりと寄りかかっていると、
不意に我に返って、彼に右手が握られているというその事実に恥ずかしくなってくる。
「・・・あの」
少し気まずそうに彼の顔を覗くと、
彼は気が付いていないのか、それともわざとなのかは分からないが、
ただ相変わらずの微笑みを浮かべながら、私の目を見つめていた。
「どうしたの?」
何故か言い出せなくて、私はうつむいてしまった。
彼は、少し黙っていたが、優しい声で私の耳にささやいた。
「戻ろう」
地平線に沈みゆく夕日が、夜を呼んでいる。
私は小さくうなずくと、握られたままの右手がグイ、と引っ張られた。
1番星が、その時一瞬、視界の端に映った。