【短編集】闇に潜む影
「今日のこと、ずっと覚えていてくれないかな」
そう言いながら浮かべる彼の笑顔は、とても綺麗で優しかった。
「はぁ?」
訝しげに彼を見る私を宥めるように、
彼はその右手で、私の頭をぽんぽん、と軽く叩く。
「これで1つ、君は手に入れたね」
「何を?」
「はは。・・・きっと直ぐに分かるよ」
彼の手が、また私の右手に戻る。
右手に感じるその強さに、私は安ど感を覚えていた。
「君は、・・・君は孤独で、何も無いって言うけど・・・。
でも、君は確かに、他の人には持っていないものがある。
それに、・・・少なくとも、今日、ここで僕と君が出会ったことで、
僕は君を覚え続けているし、
きっと君は、僕を覚え続けてくれるだろうと期待している」
「・・・言っている意味が、良く分からないけど」
私は、笑った。
さっきよりは自然に笑えただろうかと、疑問に思いながら。
「自殺しようとしたら、同じ高校の高校生に止められて、
こんな風に色々喋るなんて体験、忘れたくても忘れられないから」
私の言葉に、彼は嬉しそうに目を細めた。
「ありがとう」
その言葉は、とても美しくて、とても綺麗な赤い空に、響き渡っていた。