【短編集】闇に潜む影
「・・・残念だけどね、このままだと帰れないんだよ。こっちも仕事でね」
ぐぐ、と男たちがドアを開けた。
私の抵抗はあっけなく排除される。
押し倒されるように後ろにしりもちをつくと、男たちは部屋に入り込んできた。
「ちょっとね、・・・お話伺いたいんですよ。・・・署まで、ご同行願えますかね」
男の凄む声は、私に少しの恐怖心を植え付けた。
せめてもの抵抗に、私は黙ったまま男を睨みつけた。
「・・・」
すると、男は私の耳元でささやいた。
「一応令状は出てるんだけどね。体裁だけでも任意にしてやってるんだよ」
男はそう、冷たく言い放った。
私は何がなんだかさっぱり分からなかったが、とりあえず事態は正常ではなかった。
有無を言わさない男たちの威圧感に負けて、
私は何も言わずにうなずくと、いつの間にか両肩を掴まれながら、
アパートの前に停められていた小型のパトカーに押し込められるように乗せられた。
私は思い出す。
あぁ、そういえば今日の昼頃に見た刑事ドラマのような風景だ。
狭い車の中、屈強な男たちに挟まれて、
私はただ、テレビを消し忘れたことを少し気にしていた。