【短編集】闇に潜む影


「・・・残念だけどね、このままだと帰れないんだよ。こっちも仕事でね」


ぐぐ、と男たちがドアを開けた。


私の抵抗はあっけなく排除される。


押し倒されるように後ろにしりもちをつくと、男たちは部屋に入り込んできた。


「ちょっとね、・・・お話伺いたいんですよ。・・・署まで、ご同行願えますかね」


男の凄む声は、私に少しの恐怖心を植え付けた。


せめてもの抵抗に、私は黙ったまま男を睨みつけた。


「・・・」


すると、男は私の耳元でささやいた。


「一応令状は出てるんだけどね。体裁だけでも任意にしてやってるんだよ」


男はそう、冷たく言い放った。


私は何がなんだかさっぱり分からなかったが、とりあえず事態は正常ではなかった。


有無を言わさない男たちの威圧感に負けて、


私は何も言わずにうなずくと、いつの間にか両肩を掴まれながら、


アパートの前に停められていた小型のパトカーに押し込められるように乗せられた。


私は思い出す。


あぁ、そういえば今日の昼頃に見た刑事ドラマのような風景だ。


狭い車の中、屈強な男たちに挟まれて、


私はただ、テレビを消し忘れたことを少し気にしていた。


< 53 / 171 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop