【短編集】闇に潜む影
「どちらさま?」
私の怪訝そうな顔に、
一人、先頭にいた男が、
おもむろに着用していたワイシャツの胸ポケットから何かを取り出した。
「あのね、ちょっと聞きたいことあるんだけど」
男は、それを私に示した。
どこかで見たことのある光景に、私は記憶をめぐらしていた。
「あんたのお子さん、家に帰ってる?」
何を言っているのだろう、この人。
「帰っているかって聞いているんだけど」
「・・・誰?アンタたち」
「こちらの質問に答えてほしいね。
・・・まぁ、答えなくても、こっちは分かってはいるけど」
「はぁ?」
「ちょっとね、家に入れてもらえないかな」
「嫌だよ。帰ってよ」
私は急いでドアを閉めようとした。
しかし、何故かうまく閉まらない。
私は気が付いていいなかった。
ドアと壁の隙間に、男の足がはさまれていることに。