涙のあしあと。

May.








オレは馬鹿だった。







会議開始の時間に間に合えばいい、なんて思ってぎりぎりまで会社で資料まとめなんかしていた。







だが。





今回の会社の力の気合いのいれようはハンパなかった。






コラボだから…?






オレは会社愛とかなくて ただたんにちょっと多めの給料貰えてればいいってタチなので。







(…そろそろいくかー)





オレは重いプリントと重い腰を持ち上げた。










「賛共商事の氷口です。企画会議の予定があるのですが。」






大きなビルの受付でオレは言い放った。






「…はい。確認とれました。企画会議室は16階にあります」








16階についた瞬間すぐにわかった。








まわりの社員は30分以上前から会議に参加していたみたいだ。







なんと…オレは馬鹿だ。









「どうぞ」






席についた途端コーヒーが置かれた。






間もなくプリントも。






「ありがとうございます」





オレは自然とプリントを置いてくれた女性を見た。









その女性は
まばたきのしかたを忘れた、といわんばかり目を見開いていた。





どこかで見た。





この 目 を。








オレは ふとあの日を思い出した。






新宿の真ん中で泣いていたあの美しい人を。







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