ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
つまりだ、僕は積極的にふたりよりもひとりを選んだ、というわけではない。

しかし、結果としては、ふたりの生活を捨てる事になってまで、ひとりの時間を手に入れたことになる。

それなのに、この気持ちは何だ? いったい何だというんだ。


「なあ、どう思う?」彼女がここに居れば、そう問うただろう。


けれど彼女は居ない。


「何で居ないわけ?」


されど彼女は居ない。


「はははっ」笑ってしまった。


ひとりで。


気付いてしまった。


ひとりになって。


この部屋に彼女は居ないというのに、僕は彼女がいつも座っていたスペース分だけ、きちんと空ける様にして座っていたんだ。

彼女と別れてから今までずっと。


そういえばそうだ。

部屋を掃除した後、彼女が使っていた水玉模様のクッションを、いつもの様にその場所に戻していた。

彼女がいつ来ても良いように。

いつまで待っても来ないというのに。

バカみたいだ。
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