ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
大切なものはいつだって、失くしてから気付く。

僕はいつもそうだ。

後悔してばかり。

本当にバカみたいだ。


退屈だと思っていた日々の、本当は大切だった毎日。


浮かぶ顔。


振り解く。


遠ざかる。


手を伸ばして。


その手。


揺れ動く。


透ざかる。


目を凝らして。


真っ暗。


そして。


もう見えない。


僕が放り投げた“さよなら”が、くるりと向きを変え戻ってきた。


この部屋を出て行く彼女が、肩を震わせながら涙声で言った言葉を思い出す。


「あなたはきっとひとりでも生きていける人なんだよ」


ドアの前に浮かんだ、その言葉を、何度も何度もひとりで繰り返してみた。


永遠に変わらない、なんてものはこの世界には何ひとつない。

この部屋に残る彼女の言葉も、いつかは消えていくだろう。


それでも、何故か僕だけは永遠にひとりなのかもしれない、そう強く感じていた。








『モナコス』

        終
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