ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
陽光に夏の暑さが僅かに残り、吹く風には微かに秋が雑じり始める頃。

文化祭の準備の為、遅くまで校舎に残ることが許されていた日。


バスケ部以外の運動部は休みのようだった。

かといって文化祭の準備の為に残る生徒は少なく、むしろ普段より校内は静かだった。


僕は教室を抜け出し、屋上へ。

茶室もどきの部屋から雨の降る空を眺めて。


目の前の窓を叩く雨音とか。

体育館から聴こえる、床に響く足音とか。

近くの道路を走る車のエンジンの音さえも。

そのどれもが、心地よいブルースのリズムで――。


「何してんの?」


その声に驚いて振り向く。


「何してんの?」僕はおもわずオウム返し。


「何処に行くのかと思たから、後を付けてみた」


こんな良い場所を独り占めするのはひどい、と彼女は言った。

一年の時、同じクラスだった彼女のことが僕は好きだった。

クラス替えをしてから、話す機会はどんどん減っていって。

久しぶりの会話に僕はドキドキしていた。
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