ラヴァーズ・インザ・ダストボックス
友人が是非に、と言うので借りたCD。

今、若手ナンバーワンと言われている女性アーティストだった。

何曲目かでカッコ良いなって思ったピアノ。

僕はこういうとき「弾いているのは誰だろう?」って思うんだけど、いつもの様にブックレットで確認してみると、そこには僕のよく知っている彼女の名前が書かれていた。


共通の知人に確認してみると、やはり彼女だと言う。


「大変みたいだけど、充実してるらしいよ」


「そうか、頑張ってるんだな」


彼女の近況を聞き、礼を言って電話を切る。

もう何年も彼女とは会っていない。

「頑張ってるんだな」先ほど電話口で言った言葉をもう一度、ひとりで呟いた。




「ねえ? どうかな?」


「良かったよ」


「本当に?」ピアノの前に座ったまま、僕を見上げて彼女が言う。


本当だよ、と答える僕。


けれど彼女は、納得いかないみたいで、「もう一度」とまたピアノを弾き始める。


僕はそんな彼女を見つめ、彼女のピアノの音に引き込まれ、もう一度でも、何度でも、ずっとずっと聴いているよって、いつもいつもそう思っていたんだ――。




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