この世界は残酷なほど美しい


母さんはとても美しい人だった。
いつも笑っていて、母さんに抱きしめられるとすごく落ち着いた。
僕は母さんが大好きだった。
でも入院をしている時の母さんは嫌いだった。
なぜならば、無理して笑っていたから。
本当は知っていた。
母さんは泣きたいくらい寂しいってことに。
だけど母さんは僕の前では絶対に泣いたりしなかった。

だから僕も笑ってみせる。
そうすると母さんは笑ってくれる。
幼い無邪気な僕にはこれくらいしか出来なかった。

遺影の中でも母さんは笑っていた。
父さんが撮ったであろう写真はとても美しかった。

でも遺影を見る度にやはり父さんに対する憎しみが溢れ出る。


ねぇ父さん。
あの時なんで母さんの所に来なかったの?



聞きたくても未だに聞けずにいる。
そして母さんが最後に言った言葉がまだ耳の中にこびりついて離れない。



手を洗いトイレから出ると、廊下の隅の方に三人の女子がいた。
その中にいるのは同じクラスの乾 奈緒子(いぬい なおこ)だった。




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