この世界は残酷なほど美しい
僕は走った。
そして勢いよく電車に乗り込み、地元の駅に向かった。
移り変わる景色。
だんだんと高級住宅街へと変わっていく。
目指したのは蓮の家だった。
幼い頃からよく来ていた蓮の家はいつまで経っても大きい。
使われていない部屋なんて幾つもあるはずだ。
息を切らしながらインターホンを押すと使用人である栗田(くりた)さんの声が聞こえてきた。
「あの、僕です!流星です!蓮いますか?」
走ったせいか背中の汗がタンクトップについて気持ちが悪くなっている。
だから僕は汗の掻くことのない冬が好きだ。
「流星さん、今開けますね。お入りください」
するとゆっくり玄関の扉が開いた。
僕は迷わず中に入っていく。
まるでRPGゲームの主人公のようだ。
靴を脱ぎ捨て、僕は蓮の部屋に向かった。
玄関には僕の父さんが撮った写真が飾られていた。
それはどこかの海で。
幻想的なそれは一目で虜にさせてしまう魔法のような写真だった。