この世界は残酷なほど美しい
神様許してください。
好きな人がいる人を好きになってしまったのです。
邪魔したりしないから、どうか好きでいさせてください。
僕のこんな身勝手な願いを受け入れるほど神様は暇では無かった。
僕は立ち上がり、置いてあった鞄を持つ。
「どうした?」
「僕、行かなきゃ!!」
確かめたかった。
自分の目に映ったものだけを信じたかった。
いっそのこと莉子の心まで見たかった。
莉子は、莉子は。
莉子という存在は僕の中をおかしくしていく。
総合病院までの道のりは苦ではなかった。
数駅先にそこはあった。
それは僕の母さんが入院していた病院でもあった。
だから行き方は慣れたものだ。
当日、駅前にあった駄菓子屋はもう閉店していて、それだけ時間が経ってしまったということだ。
総合病院に着き、フロントへと向かおうとした時、前から歩いてくる莉子のお兄さんを見掛けた。
僕は慌ててお兄さんに近寄る。
「あの!すいません!」
「え?」
「り…莉子はこの病院にいるんですか?」
お兄さんはある病棟から出てきた。
その看板を僕は見てしまう。
“精神科”
莉子は僕が思っていた以上に心に暗い塊を抱えて生きていた。
僕はそれを取り除ける武器も無ければ、勇気も無かった。