この世界は残酷なほど美しい


スマートフォンをお兄さんに渡し、僕は煙草臭い空気を思い切り吸った。
そして思い切り吐いてみた。
煙草を吸った気分に似ているのではないかと、そう思ったから。



「教えてください。僕は莉子のことが知りたいんです。」



「教えてどうかなるの?」



お兄さんは冷たい視線を僕に浴びせる。
まるで僕を試しているようだ。



「僕は莉子の傍から離れません」




「ははっ…アイツと一緒のこと言うんだな。」




「アイツ??」



僕が首を傾げて言うとお兄さんから冷たい空気は感じられず、穏やかな瞳で僕を見ていた。


夕陽がこの街から姿を消していく。




「…莉子を病気にしたのはこの俺だよ。俺が悪かったんだ。あの時、莉子を一人にしたから」



そう言ってお兄さんはゆっくりと自分の過去を話してくれた。
莉子に何があったのか。
莉子が何故統合失調症になってしまったのか。





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