この世界は残酷なほど美しい
インターホンを押し、しばらく待つと母さんが出てきた。
出てきた母さんは日本のいる頃とはがらりと変わり、目の下にはクマが出来て、すっかり老け込んでいた。
「…母さん?」と俺が呼ぶと「何しにきたの?」と冷たく言い放った。
足元を見ると足には複数の傷。ブランケットを羽織っていたせいか、あまりよく見えなかったが腕のにも痣があった。
俺は黙って家の中に入っていく。
そうする俺に激しく抵抗する母さん。
「莉子はどこだ?」
莉子にも何かあったのでは?
不安が不安を招く。
そして莉子の部屋が見つかり、思いきりドアを開けると、ベッドの上に座り、ぼーっとする莉子の姿があった。
その姿はあまりにも酷く、あの元気だった莉子の面影はこれっぽっちも無かった。
莉子に近寄り、莉子に触れると莉子は俺を激しく拒絶した。
まるで幽霊を見たかのように叫び、「触るな」と爪を出して引っ掻いてくる。
なぜこんなことになってしまったのか分からなかった。