この世界は残酷なほど美しい
「そうか。頑張れよ。じゃあ俺はそろそろ行くな」
お兄さんは煙草を捨てて立ち上がった。
にっこりと笑うお兄さんに会釈をし、ブランド香水の匂いと煙草の匂いだけをそこに残してお兄さんは行ってしまった。
何だろう、この脱力感。
ふぅ…と息を吐いて見え始める夜空に顔を向けた。
「頑張るって言ってもなぁ…」
どうやったら良いのだろう?
でも中途半端に莉子の過去に触れて、中途半端に投げ出したくはない。
触れた以上最後まで貫き通したい。
莉子の初恋の人はどんな人なのだろう?
彼もまた自分に苦しんでいて。でもきっと二人の恋は繊細で美しいのだろう。
僕の入る場所はあるかな?
そんなことを考えていると、夜空ではないものが視界に映った。
「流星?何してるの?」
「うわぁ!!」
視界に映ったのは、母さんの親友の黒川春香(くろかわ はるか)さんだった。
「春さん!!」
この日から徐々に真実は明かされていく。