この世界は残酷なほど美しい
僕のいけないところは素直に言葉に出してしまうとこだと思っている。
「野中くんと奈緒子、付き合って結構長いのにずっと浮気してたんだって。」
僕の腕を掴みAが言った。
どうして腕を掴む必要があるんだとツッコミを入れたかったけどやめた。
奈緒子を見ると手で涙を拭き僕を見上げた。
「気づかなかった私が悪かったの。野中くんは悪くないよ。私が…悪いの」
そう言って奈緒子は笑ってみせた。
どくん、と胸が痛くなった。
記憶の中に眠る母さんの残像が奈緒子と重なったからだった。
なぜ今笑ったのだろう?
悲しいはずなのにさっきまで泣いていたはずなのに…
遠くの方から幼き自分の声が聞こえてきた。
「お母さん、逝かないで。もうすぐお父さんが来るよ…」
「流星…お母さんね……」
僕はそんな器用な人間じゃなかった。
さっきまで泣いていたのにすぐに笑うことなんてできない。
僕はずっと殴りたかった。
無理して笑う母さんをこうさせている父さんを。
だから…僕は奈緒子をそうさせている野中くんを許すことが出来なかった。
それは奈緒子が好きとかそういう感情ではなく、ただ重なり合ったらだけ。
僕は気づいたら走っていた。