この世界は残酷なほど美しい


怖かった、ずっと。
考えたくもなかった。


「ただいま」と帰ってきても「おかえり」と俺を包んでくれる美羽がいないことを。


流星は幼かったからきっと理解はしてなかったと思う。
でもいつも寂しそうな表情をしていた。



「ママ、治る?」



俺を見ながら流星はこう言った。
俺は目線を流星に合わせてにっこりと笑う。


「心配するな、治るから」



でもこういう時子供は敏感で。俺が泣きそうなのを知っていたのだ。
だから流星はぎゅっと俺を抱きしめた。
小さな体で。

大丈夫、大丈夫だから。

美羽は居なくなったりなんかしない。
だって約束をしたから。


天国まで一緒だって…
死ぬときは一緒だって…



そうやって…約束したから。





「雅、ありがとう」





そう残してキミは逝った。




< 312 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop