この世界は残酷なほど美しい
それは7月7日だった。
その日朝起きると異変を感じた。
遠くから「雅」と美羽が俺を呼ぶ声がして。
だから俺は怖くなって急いで病院に向かった。
病室に行くと、美羽はゆっくりと目を開けてこちらを見た。
そして小さく笑ったのだ。
「美羽…」
手を差し伸ばすと美羽も細くなった手をこちらに向ける。
「…雅」
霞んだ声で呼ぶ美羽の声を聞いた瞬間、涙腺が崩壊した。
こんなにも愛してくれる人は他にいないと強く思った。
だから俺はこんな人を愛せて幸せだと感じた。
痩せ細った美羽の体を抱きしめる。
もうこれが最後だと確信したんだ。
美羽は逝ってしまう。
俺と流星を残して…
…居なくなる。
居なくならないで…と何度も思った。
「美羽…愛してる。俺は美羽以外誰も愛さないよ。」
「約束…守れなくてごめんね…また逢えたら…私だけを愛してね…。雅…私ね…」
「ん?」
「幸せだった…ありがとう。最後にワガママ言っていい?」
「いいよ…」
「キスして?」
…バカだよ、美羽。
そんなこと言わなくたってしてあげるのに。
朝陽の溢れる病室で、
俺は美羽に最後のキスをした。
そして美羽は優しく微笑むように目の前で息を引き取った。