パパはアイドル♪vol.2 ~奈桜クンの多忙なオシゴト~
「・・・結婚するの」



自分を納得させるように言うと、悲しそうに少し笑った。
どこか他人事の言い方は、それが梓の意に反している事を物語っている。



「何で・・・」



奈桜は下を向いたまま、梓の顔を見れない。
『相手は誰?』なんて、聞くまでもないだろう。
青山柊しかいない。
さっきの柊とのやりとりや、色んな情景が頭に浮かぶ。
そして、『どうしよう?』という思いがずっしりと奈桜の心を支配する。



「何でだろ?笑っちゃうよね。結婚って、案外、あっけなく決まるもんなのね」



うつむく梓の目から、大粒の涙がこぼれた。
奈桜には見えてはいないが、感じている。
事務所絡みの、あの事が関係しているに違いない。
いちアイドルの奈桜に何が出来る?
無力感が奈桜を襲い、立っているのがやっとだ。
何も言えない奈桜に、梓は優しく笑う。



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