明日が欲しい




翌日,私は彼女と二人で団地の隣りに有る公園をゆっくりと歩き,そしてベンチに座って外の空気を満喫して家に戻った。


たった30分でも彼女は喜んでいた。


しかし疲れが出たみたいなので,彼女はベッドに横になってそのまま眠ってしまった。


私は彼女の横でじっと寝顔を見ていた。


何時間経ったか解らないが,外が暗くなって来たので、私は挨拶を済ませて帰る事にした。


そっと部屋を出ようとした時,彼女は目を覚まして,


『今日は有難う。

とても楽しかった。

今度は何時行けるかなぁ!

こっちに来て。』


と彼女は手招きをしたので,私はベッドの横に座った。


彼女が目を閉じたので,そっと口付けをして彼女の肩を抱きしめた。


香織の目から、涙が流れたのと同時に彼女の手から力が抜けて行くのが解った。



そして、小さな声で最後の力を振り絞るかの様に


『ごめんね。』


それが最後の言葉だった。




< 57 / 62 >

この作品をシェア

pagetop