明日が欲しい
私の目からとりとめなく涙がこぼれ落ちた。
彼女を抱えてリビングへ行き,香織の両親と妹の前で下ろした。
何も言わなくても,全てを解ったかのように黙って私の方を見て頷いた。
本当なら,もっと早くに逝ってしまってたかもしれないのだが,彼女の気力でここまでもったのだと慰められた。
本当なら、我が娘が亡くなって一番辛い両親が,精一杯我慢して私を気付かってくれているのが余計辛かった。
私は朝まで彼女の家に居させてもらい,最後のお別れをした。
出会ってから9年余りの月日を思い出して,今,目の前で寝ている香織が突然目を覚まして、私を驚かそうとしているんじゃないのかとさえ思うほど,安らかな顔をしている。
始めて知らされる妹は,余りにも突然の出来事に声も出ない状態である。
背中の方で、お母さんの小さな泣き声が聞こえてきて、終に私も我慢できなくなり大きな声で泣いてしまった。