漆黒の姫君


水に霧が晴れるように何かが映し出される。焦点の合わないそれは、ぼんやりとした輪郭をだんだんと鮮明に映し出していく。


愛里は食い入るように水盤を覗き込む。今まさに、自分の想像では収まり切らない現実が自分の前で起こっているのだと思うとなんだか不思議な気持ちになった





水盤がまた光ったと思うと、そこには少女の姿が映し出された。




『お久しゅうございます、陛下。長らくお待ち申し上げておりました。』


少女は自分の体よりも長く伸ばされた薄緑の髪を持ち、金と朱が混じった瞳を持っていた。一度も光を浴びた事がなさそうな肌も、鈴の音のような声も、彼女を一層引き立たせ、謎めいて見させる。



_お久しゅうって、私、この人と会ったこと無いと思うんだけど…。



「リディアンヌ、陛下は前世の記憶を持っていらっしゃらない。一から説明を頼む。」


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