僕のミューズ
どれだけのプレッシャーを感じるだろう。
背中を押してくれる周りの歓声さえ聞こえいのに。
何を目指して、歩けばいいのか。
「…芹梨」
俺はその孤独な背中に向かって、名前を呼んだ。
俺の声は、低く講堂に響き渡る。
でも彼女は振り向く事はない。
届かない。
歓声も、声援も、彼女を呼ぶ声もなにも。
でも、俺は。
「芹梨」
例え聞こえなくても、呼び続ける。伝え続ける。
届くまで、ずっと。
しばらく俺は、芹梨の背中を眺めていた。
やがて彼女は、ゆっくりと振り返る。
カツンと芹梨のヒールの音が、講堂に響いた。
振り返り、俯いていた顔をあげる。
歩き出そうとしていたその足を、止めた。
真っ直ぐに俺を見つめる芹梨の視線が、俺のそれと重なる。
驚いた瞳は、瞬きをするのも忘れていた。
何も言わない芹梨。
俺は少し笑って、手話をした。