鬼畜王子のメイド様。



「でね、ある日おば様から聞かされたの。『あんたは将来、修也くんと結婚してこの家を出て行くんだ』って。許婚とか言ってるけど…ただ言ってるだけ。私と暮らしたくないから結婚しろって」


屋上に吹く風が冷たく髪を揺らす。
少し肌寒い。


それと同時に私の瞳から涙が溢れた。


「ちょ、どうして泣いてるの?」

「だ、だって…っ!も~わかんない」


わからない。何で泣いてるのか。
自分のことじゃないのに…つらい。


だけど…桜子さんは一度も涙を見せなかった。

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