永遠の約束-聖母の涙-
「お待たせしました」
紙袋を胸に抱きしめた状態で走ってきた真理亜。
彼女が近づいてきただけで、深青の鼻には食欲をそそるいい匂いが漂ってきた。
実は、この学校に転校してきてすぐに、ここでの食事のためのカードを松下から受け取っていた深青。
それは、この学校がどういう学校かを知っている松下なりの深青への配慮だったのだろうが、ただでさえ、それとは別に経費としてもらっている分がある。
それに、この事件のことで、深青にはお給料が発生している。
それを思うと、それも甘えてしまうのは深青なりに気が引けたのだった。
「ここのサンドイッチ、とても美味しいんですよ」
「そうですか…」
にこやかな笑みを浮かべながら話す真理亜に、深青も笑みを浮かべて返す。
だが、その心情は「そうでしょうね」と納得をしていた。
袋から漂ってくる匂いだけでも充分、その美味しさは伝わってくる。
「如月さん。
先ほど通ってきていた薔薇苑(ばらえん)で、食べませんか?」
「薔薇苑?」
「はい。
先ほどのタイル張りの道を囲うように植えられていた薔薇を覚えてらっしゃいませんか?」
そういえば―――…。
カフェへと行くまでに通って来た道で、薔薇が一面を覆いつくすように両側を埋め尽くしていた場所があった。
そのことを、深青は思い出す。