とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
夕方の子供達の稽古時間まで暇になり、縁側で昼寝をしていると「おい」と軽く蹴られて目を開けた。
「ワシは夕方から飲みに行くから道場は頼んだぞ」
「んー…わかったよ」
あまり考えずに返事をして、“やられた!”と気付いたのは夕方の稽古が始まってからだった。
「今日って金曜じゃないか…」
金曜だけ夜間の稽古があるのだ。
右京と大して歳も変わらない門下生ばかりで、気は楽だが体力的にはキツイ。
案の定、夜間の稽古は途中で門下生同士がもめたり、突然携帯で長電話をはじめる奴等が続出だった。
「お前らいい加減、ちゃんとやれよ…」
半分呆れてそう言うと右京は長電話しているヤツから携帯を取り上げ、「今取り込み中だから」と勝手に切った。
「ちょッ…!右京さん、勘弁してよ~」
「勘弁して欲しいのはこっちだっつーの!」
「そいつ今彼女とヤバイらしいっすよ?」
「なら稽古に来ないで彼女ん所行けよ。」
「いや、今日は右京さんが居るっ聞いたんで!」
右京は溜め息をつくと「とにかく!」と声を張り上げた。