とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
「あ。…こんばんは。」
「…どうも…」
「なんだ、そうならそうと言いなさいよ!」
「ん。どーでもいいから早く自分の部屋行ってて。」
忍は「はいはい」と笑いながら隣の部屋に消えて行った。
右京は何事も無かった様に「入って」と門下の二人を招き入れた。
「…誰っすか?今の美女は…」
「忍だよ。」
「あれが忍さん!?…ヤバイ…めちゃくちゃ美人じゃないですか!」
「って…事は右京さんの彼女!?」
「ずりーなぁ!イケメンは得だよなぁ~」
そう言われたが実際「そうでもない」と右京は思う。
何せ“あの”師範と“あの”父親の監視下にあるのだ。
「毎日が命懸けだよ…」
二人は右京の言葉にゲラゲラと笑った。
着替えを手にバスルームに行く途中、お茶をお盆に乗せた忍とすれ違う。
「サンキュー!長居すんなよ?」
「なんの心配してんのよ…急いだら?バイトでしょ?」
右京は「そうだった」と答えてバタバタと階段を降りて行った。
入れ替わりで部屋に来た忍に門下生の二人が歓声を上げた。
「忍さん!右京さんが来るまでお話しようよ!」
忍はちょっと考えて「じゃあ少しだけ」とその場に留まるのだった。