とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
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右京は機嫌が良くなかった。
「右京さん、機嫌直して下さいよ~」
「俺ら忍さんの事口説いてないっすよ?」
Ed Hardyのパーカーを被った右京はムッとして二人を睨んだ。
背中のドクロが右京の威圧感を三割増しにする。
「コワッ!!右京さん、怖いから!」
そう言われて右京は溜め息をついた。
「どうせ器が小さいデスヨ、俺は~」
「言ってない!そんな事言ってないって!」
右京のご機嫌は直らないままAxelに入ると門下の二人をカウンターに座らせた。
「よぉ、遅かったな。」
「ん。師範が飲みに行きやがった。…コイツらうちの門下生な。」
右京がそう言うとガクは屈託のない笑顔で「いらっしゃい」と挨拶をした。
「クロウ!会いたかったっすよ!」
「あーそう。着替えたいから離れてくれる?」
ジンヤは「それより」と右京に耳打ちをする。
「今店にどっかのチーマーが居るんっすよ…嫌な予感がするんっすよね~…」
そう言われてジンヤの視線の先を追う。
奥のボックス席の連中だと判った。
女を数人侍らせた奴等に「そういう店じゃねぇっつーの」と悪態をついた。
「時々来るんだけど、常連が嫌がるんすよね…」
確かにそこだけ独特な空気で近寄りがたいだろう。