とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
クリスは背中からビルの谷へと落ちていく。
…ああ、やっちまったな…
こんな状況なのに自分の馬鹿さ加減に笑えてくる。
『クリス!!』
『…右京…!』
クリスの目に飛び込んで来たのは両手を広げ、自分に向かってくる右京だった。
右京の真後ろに輝く月で彼の背後が波紋状の光を帯びる。
綺麗だ…まるで“天使”…。
『クリス!!手を伸ばせ!』
右京の声にハッとする。
クリスは右京に向かって目一杯腕を伸ばした。
…もう少しッ…!!
自分に腕を伸ばす右京の両目が紅く光る…。
─指先が触れた。
手繰り寄せる様に右京がクリスの片腕を両手でガッチリ掴む。
『うおおぉぉぉぉッ!!!!』
『…!?…』
右京は空中で彼の腕を引き上げ、思いっきり上に投げ飛ばす。
クリスは何が起きたのか判らなかった。
真下から突如吹き荒れる暴風…否、小さな竜巻のようなソレのお陰で身体が浮く。
…たッ…助かった…!?
だが代わりに右京がビルの谷に落ちていく。
『うッ…右京!!』
竜巻に弾かれ、クリスはビルの屋上に投げ出された。