とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
コンクリートの上をゴロゴロと転がり、屋上の縁に身体を打ち付けられて止まった。
クリスは一瞬呻いたが、直ぐ様立ち上がると右京の落ちた方へ駆け出した。
『右京ーー!!』
暗いビルの谷底に向かって叫ぶ。
駄目かと思ったその時、向かいのビルの下の方でガラスの割れる音が聞こえた。
微かに紅く何かが煌めく。
その煌めきが壁を蹴るようにこちらに向かって来る。
『呼んだか~?』
『……』
クリスは右京の姿を見てハァ~…と大袈裟なくらい安堵の息を吐くとその場に座り込んだ。
『…てっきり駄目かと思った…』
『そりゃこっちの台詞だ!』
腰に手を当てて自分を見下ろすオッドアイを見上げてクリスは笑った。
インカムからアランの『大丈夫か!?』という声が聞こえる。
『大丈夫だ。…クリスも大丈夫か?』
『ああ…寿命が5年くらい縮んだけどな…。』
二人の言葉にアランは『無事なら良かった』と言った。
『ところでバージの気配を見失った。』
『それがこっちでも発信器の信号が途絶えた。最後にキャッチしたのはそこから西に700m程行った所だ。』
右京がビルの上から西の方角を睨む。