とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
なんとなく西の空が淀んで見える。
『…間違いない。“結界”だ。』
これだけのストリゴイが溢れかえっているのに“親”であるクドラクの尻尾が掴め無かったのも、この結界のせいだろう。
『って事は、彼処に入ったら本部と通信は取れないな…』
『どうする?俺独りで行ってもいいぜ?』
『冗談!行くに決まってるだろ。』
そう言うクリスに右京はフッと笑った。
『…って訳だ。これから暫く音信不通になる。』
『了解。ちなみにあの辺りはゲイリー伯爵の屋敷があった。』
『“あった”?…過去形か?』
『屋敷自体はあるが、後継者が居なくて廃墟と化してる。巷ではゴーストハウスだって噂だ。』
『ゴーストハウスって言うより、ドラキュラ伯爵の舘だな。』
『まぁ、お前らなら大丈夫だと思うが、気をつけろよ?』
ロイの言葉に『ラジャー』と答えて二人は西へと向かう。
『…さっきはすまなかったな…』
『何が?』
『気が緩んだ…』
気まずそうに言うクリスに右京は目を細めた。
『気にしてない。クルースニクだって結局は人間だ。』
『俺とは違う』と言う右京にクリスは躊躇いがちに口を開いた。