とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
伯爵邸に着くと、今にも何か出てきそうな雰囲気に忍は躊躇した。
「ねぇ…なんでこんな所でやるわけ?」
「こんな人数居るのに怖いのか?」
自分から参加したいと言ってしまった手前、今更「やっぱり止める」とは言えず恐る恐る屋敷に入った。
右京は「ほら」と忍に手を差し出すと、迷わずその腕にしがみつく。
『大丈夫ですよ。私も忍様をお守りしますから。』
前を歩くバジリスクが振り返ってそう声をかけた。
『俺はシノブの方が怖いけどね…』
そう言って笑うニックを忍は睨んだ。
地下へ続く階段に差し掛かった時、そこに広がる闇に一同足を止めた。
─おや、こんな大勢様でお越しとは…
『クドラク。すまないが灯りを頼む。』
─フフフ…御安い御用です。
ポッと辺りの燭台に灯りが灯った。
『…だ…誰の声…!?』
『私ですよ。』
『『ぎゃあああぁぁぁ!!』』
突然真後ろから聞こえたクドラクの声に忍とシンディが飛び上がる。
『一々嬉しい反応ありがとうございます。』
青白い顔の青年は不気味に微笑んで『こちらへ』と地下へと案内してくれた。