とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




だだっ広い客間に入ると、クドラクは『どうぞ』と皆を招き入れた。




─いつ見てもムカつく…!




昨日からこの薄っぺらい笑みを浮かべた吸血鬼のせいで散々だ!




『…おい、クドラク。』




『何か?』




『ちょっと聞きたい事がある。』




右京は直ぐ戻ると告げてクドラクの首を掴んで別室まで連れ出した。




『なんです!?…乱暴は止めてくださいよ…』




『うるさい。…正直に教えてくれ。…お前らの吸血行為の意味はなんだ?』




『…はぁ?』




『だから!!吸血に“捕食”以外の意味ってあるのか!?』




ロイは冗談で言ったみたいだが、右京には強ち否定出来ずにずっとモヤモヤしていた。




それを言うとクドラクはクスクスと優雅に笑った。




『そんな事を気にするなんて、意外とかわいいですね…』




クドラクは窓辺に腰掛けて右京を真っ直ぐ見つめた。




『結論から言うと“NO”ですね。』




ホッと息をつく右京に『ですが』とクドラクは目を少し細めた。




『私達バンパイアの吸血行為は痛みを快楽にすり替えます。…判るでしょ?』




確かに判る。…判りたくないが…




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