とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
薄暗い廊下の人影に気付いて右京は顔を上げた。
『フラフラだな…貧血か?』
『かもしれない…』
そこに居たのがクリスで良かったと思う。
それが忍だったら泣いて抱き付いてた気がする。
─思いっきり忍に甘えたい…。
そんな気分だった。
『…俺、選択間違えたかな…』
『たぶんな。』
『即答かよ…』
『ふ…まぁ、お前が決めた事だし仕方ないだろ。俺は何かあったら頭をぶち抜くだけだ。』
『…それが俺じゃない事を祈るよ。』
ぶっきらぼうな言い方のクリスだったが、自分を心配して待っていてくれたんだろう。
そう思うと少し嬉しかった。
客間の扉に手をかけた時、『待て』と呼び止められる。
『付いてるぞ…。』
グイッと右京の顎を掴んで横に向ける。
『いっ…!…つぅ…』
顔を歪めた右京を見てクリスは首を捻った。
『…痛いのか?』
『…なんかクドラクに与えられる快楽って気分悪いだろ?…だったら痛みの方がマシな気がしてさ…』
『とことん馬鹿だな。』
溜め息混じりにそう言いながらクリスは右京の首を伝う血を指で乱暴に拭った。