とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
扉に手を掛けたまま深呼吸を繰り返す。
─平常心平常心…
『…ったく…早く入れよっ!』
イラついたクリスの声と共に蹴りを食らい、開いた扉と一緒に客間に転がり込んだ。
『おまっ!なにすんだよ!』
『大袈裟なんだよ!ぐだぐだヌカスと頭をぶち抜くぞ!?』
ホルダーからコルト社のピースメーカーを引き抜くと右京の眉間に突き付けた。
『…クリス…一応それ犯罪になるから気をつけてな…?』
あまり緊迫感のない口調で言うダンをチラッと見てクリスはフンッ!と鼻を鳴らした。
ブツブツ文句を言いながら席に着く右京に、隣の忍が顔を近付けた。
「…あれが例の…“ハンター”?」
「そ。いつも拳銃二丁は携帯してる…何を狩るつもりなんだか…」
「聞こえてるぞ…右京。」
─聴覚も人間離れしてんのか…
両手を上げて“降参”する右京にクリスが舌打ちする。
『全員揃ったな?じゃあ始めるか。』
ダンがそう言ってテーブルに手をついて立ち上がると、ロイがプロジェクターのスイッチを入れた。
『先日ニックに“ヴォイニッチ手稿”の内容を入手してもらった。
あと、シノブが所持している“名前のない本”の内容…これで実質的には解読可能なはずだ。』
その発言に右京が手を挙げて『ちょっといいか?』と割り込んだ。