とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
“フェイク”…。
クリスはそう言った。
─なるほど、そういう事か。
これは“罠”だ。
さすがのバフォメットもクルースニクと元熾天使を同時に相手にするのはキツイらしい。
クリスが相手をしたバフォメットがフェイクだとしたら、今自分の目の前に居るヤツが本物か…?
右京に気付いてゆっくりと振り返るバフォメットを見て口角を上げた。
『よぉ、また会ったな。角の調子はどうだ?』
─グルルルル…
牙を剥き出して睨むバフォメットを見据えながら、右京は日本刀を引き抜いた。
『お前、何を探してんだ?』
─グルルルル…
『ここで何をしてる…?』
─グルルルル…
ただ低く唸るだけのバフォメットに右京は溜め息をついて太刀を肩に担いだ。
『…っとに何考えてんのかわかんねぇ野郎だな…』
─何故コイツはここに居た?
『…コロッセオに何か在るのか?』
ピクリとバフォメットの耳が動いた。
─ほぅ…言ってる事は理解してるのか…。
『来いよ、山羊野郎。もう片方の角も折ってやるよ!』
─グゥワワワオォォォ!!
どうやら右京の挑発的な言い方が気に入らなかったらしい。