とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




あれが本当にあの右京なのだろうか…。




いや、間違いなく右京なのだが、まるでオーラが違う。




クリスの脳裏に浮かんだのは“ベルセルク”という言葉だった。




あれが“ベルセルク”だとしたら自分に彼を止める事が出来るのだろうか…。




クリスは今まで自分の役目を完璧にこなしてきたつもりだった。




“どんな怪物だろうが、倒せない奴はいない”




そう思って来し、その自信もあった。




だが目の前の光景を目にした瞬間、自分の間違えに気付く。




笑いながらバフォメットの引き裂かれた腹を踏みつける右京に“恐怖”を感じた。




苦しそうに唸り暴れる怪物の腕を徐に掴み、鈍く生々しい不快な音が聞こえる。




クリスは自分が知らず知らずの内にガタガタと震えている事に気付いた。




込み上げる吐き気。




バキバキという不快な音は、グシャッという音に変わる。




─ウギャャァァァァオオ!…




けたたましいバフォメットの叫び声と共にもぎ取った腕を掲げて眺める右京。




ヒタヒタと滴る血を自分の口に垂らし、旨そうに味わう姿に堪らず『うっ!』と両手で口元を押さえた。




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