とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
『クリス!!…クリス一体何が起きてるの!?』
シンディの声に我に返る。
吐き気を堪えて荒い息を繰り返すと『暴走だ』と短く告げた。
─そうだ…この暴走を止めなくては!!
自分のやるべき事は判って居るのに身体が動かない。
目を閉じて深呼吸を繰り返す。
そして意を決して観覧席を駆け降り、バレッタを構えた。
視線の先の右京はバフォメットの腕を投げ捨て、その頭を両腕で掴んで持ち上げている。
─どうする!?…右京を撃つのか!?
クリスは狙いを定め…
─引き金を引いた…。
銀弾は右京が掴んでいたバフォメット頭を貫いた。
灰と化すバフォメットと同時に右京の身体がぐらついた。
膝を着いて項垂れる右京にクリスはゆっくりと近付く。
『…しっかりしろ…!』
右京にそう言うと彼は虚ろな目でクリスを見上げた。
『…何が起きた…?』
『…そりゃ、こっちの台詞だ。』
真っ赤に染まった両手を見つめ黙り込む右京をクリスは無理矢理立たせた。
『バフォメットを殺ったのは俺だ!』
クリスがそう言うと力なく首を振る右京が何か言いたげに口を開いた。
『何も言うな。殺ったのは俺だ!…解ったか?』
『クリス…ああ…解った…』
オッドアイを潤ませる右京にクリスは『解ればいい』と血塗れの銀髪を撫でた。
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