とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
ハッとしてバスルームの扉を勢い良く開けた。
「右京!?」
「…忍…?」
「怪我したの!?」
「いや…かすり傷だよ。」
「大丈夫」と囁くとシャワーの音が止み、右京がシャワーカーテンを開けた。
忍は彼の顔を見てホッと胸を撫で下ろすと、そっとバスタオルで右京を包んだ。
少し背伸びをしながらワシャワシャと自分の髪の毛を拭く忍に、右京は力なく微笑んだ。
突然そのままギュッと抱きしめられ、忍は驚いて右京を見上げる。
「…右京?どうしたの?」
「少しだけ…少しだけこのままでいさせて…?」
右京がこんな風に甘えてくる時は大抵何か悩んだり凹んでいる時だ。
忍は黙って右京を抱き返すと、子供をあやすように背中を擦る。
でも何も聞かないし何も言わないでくれる。
そんな忍の優しさに右京は次第に癒されていく気がした。
「忍…」
「なに?」
「大好き…」
「ん…知ってるよ。」
ちょっと首を傾げてニッコリ微笑む忍に右京は顔を近付けた。
自分の銀髪から滴り落ちた水滴に忍がビクッと肩を震わせた。
お互い顔を見合わせてクスッと笑う。
右京の鼻の先が忍の鼻の先に触れた。
それは自分達だけの“合図”。