とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
「俺さ…バフォメットと対峙した時、嬉しかったんだ。
すげぇ不謹慎だから皆には言えないけど、あんな強いやつ初めてだったから…」
そして一瞬表情を曇らせて悲しそうに笑う。
「やり合ってるうちに歯止めがきかなくなって…気が付いたらヤツの腕を…引きちぎってた…」
その光景を思い出す。
温かく滴る赤い滴を味わう自分…。
はっきり言って旨いとは思わなかった。
感じたのはバフォメットをねじ伏せてやったという“征服感”。
自分を恐れ逃げ惑うその姿に満足した。
まるで猫が仕留めたネズミをいたぶるような…ただの戯れ事と同じだったんだ。
「あの時の俺は異常だった。…忍…俺、怖いんだ。」
いつか自分の大切な人を手に掛けてしまいそうで…。
─多分今泣きそうな顔をしてる…。
右京はうつ伏せになって枕に顔を埋めた。
忍はそっと手を伸ばして彼の頭を優しく撫でた。
「右京は大丈夫。絶対に仲間を手に掛けたりしないわ。」
顔だけ動かして右京は忍に目を向けた。
「貴方はそこまで弱くない。私知ってるよ?右京の本当の強さは力じゃないって事。」
忍はその澄んだ瞳から一筋の涙が溢した。
「…俺の本当の強さ?」
「右京の強さは……
……“人を想う気持ち”」